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斜め向かいの男が自分にちらちらと視線を送ってくるのに気付いたのは、摩菜がメールをチェックしているときだった。 うつむいて本を読んでいるように見えるのだが、時折視線をさまよわせ偶然を装って摩菜を見ているのだ。 男が自分に性的な好奇心を持っているのは明らかだった。 今日の彼女は制服姿だった。 日焼けした肌に染めた髪が良いコントラストだ。 バスケットで鍛えた筋肉質の太股が短めのスカートから飛び出している。 膝下はスーパールーズに覆われていた。 摩菜は携帯でメールチェックをするふりをし、相手に気取られないようにこの男を観察した。 歳は40代前半と言うところか、体型は太めで特に腹がぼっこりと出ていた。 脂性の頭は禿げ上がり、じっとりと鈍い光沢を放っている。 高価なスーツを身につけている、そこそこの高給取りだ。 会社では恐らく部下を何人か持つ地位にいるのだろう。 昼の3時に電車に乗っていることから男は恐らく営業職、援交少女が一番引っかけやすい手合いだ。 顔色の悪さが、暴飲暴食を繰り返してきたことを物語っている。 自分の欲望を抑えることが出来ない、典型的な快楽主義者。 男が顔を上げ、再び自分に視線を向けたとき、偶然を装って視線を合わせた。 男がどぎまぎした表情で顔を背ける。 摩菜がこの男の本質を直感するのはこの一瞬で十分だった。 卑屈で媚びるような目つき、快楽を求めてやまないぎらついた瞳は、この男がある種に属する事を物語っていた。 摩菜は再び携帯画面に顔を戻したが、もはや画面を見ておらず、唇にはうっすらと笑みが浮かんでいた。 もちろん降りた男を誘う為だ。 降りた駅を、摩菜はよく知っていた。 男が繁華街を抜けて人気のない路地に入ったところで声をかける。 射るような視線でまっすぐに見つめ、第3ボタンまではだけたブラウスの間から豊満な乳房をのぞかせて一言話しかけるだけで十分だった。 男の相好は醜く崩れ、魂を抜かれたようにフラフラと摩菜に付いていく。 |